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評価:
北村 薫
新潮社
¥ 540
(2007-03)
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微熱をはらむその声に聴き入るうちに体ごと異空間運ばれてしまう17話。
色とりどりの「謎」のものがたり。
空想のみが生み出せるような金持ちの家で、総量の甚六(長子は大事に育てられるので、その弟妹よりもおっとりしていたり、世間知らずであったりするということ)で、手堅い質の弟がいて万事切り回してくれるので余計な手出しをしないでいても悠々とした生活が出来る…という立場の聴き手。
色々な書物に親しんでいたのが、そのうち書物や絵空事ではなく市井の人の実際の体験談を聞く方が興味深かろうと思い至り、海辺に小部屋を借り、全国の雑誌、新聞に広告を載せ若き娘の語り女を募集する…というのが冒頭の文章です。
その後はその「語り女」たちの語る話になります。
聞き手はほとんど何も語らず、女たちの話のみ。
不思議な話なので、気持ちの良い浮遊感があります。
キャンディよりしつこくなくて腹にもたまりにくい…そして聴いた(読んだ)後は不思議な後味が残る…色とりどりの小さいゼリーを食べている感じ。