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評価:
久坂部 羊
幻冬舎
¥ 630
(2005-04)
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「廃用身」とは、脳梗塞などの麻痺で動かなくなり、しかも回復の見込みのない手足のことをいう医学用語である。
医師・漆原糾は、神戸で老人医療にあたっていた。
心身ともに不自由な生活を送る老人たちと日々、接する彼は、<より良い医療とは何か> をいつも思い悩みながら、やがて画期的な療法「Aケア」を思いつく。
漆原が医学的な効果を信じて老人患者に勧めるそれは、動かなくなった廃用身を切断(Amputation)するものだった。
患者たちの同意を得て、つぎつぎに実践する漆原。
が、やがてそれをマスコミがかぎつけ、当然、残酷でスキャンダラスな「老人虐待の大事件」と報道する。
はたして漆原は悪魔なのか?
それとも医療と老人と介護者に福音をもたらす奇跡の使者なのか?
廃用身、と言う言葉をこの作品で初めて知りました。
作者の久坂部羊さんは医師だそうで、この作品がデビュー作です。
作中で描かれる「Aケア」に度肝を抜かれますが、介護にまつわるエピソードがとてもリアルで、一瞬「こういう医学の進み方ってありになってしまうかも…」などと思ってしまったり。
インパクトがあります。
そして単なる面白さを狙ったインパクトではなく、現代の介護医療の抱える問題もきちんと描いているのでかなり考え込んでしまう感じでした。