畠中 恵著
新潮社 (2004.4)
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江戸有数の廻船問屋の一粒種・一太郎は、めっぽう体が弱く外出もままならない。ところが目を盗んで出かけた夜に人殺しを目撃。以来、猟奇的殺人事件が続き、一太郎は家族同様の妖怪と解決に乗り出すことに。若旦那の周囲は、なぜか犬神、白沢、鳴家など妖怪だらけなのだ。その矢先、犯人の刃が一太郎を襲う…。
めっぽう体が弱く、周囲は甘々に世話を焼き、その世話の焼き方に見合うだけちゃんと(?)寝込むこの若旦那・一太郎。
その一太郎を大甘で可愛がる両親は、近所の口の悪い呉服屋の主人が「大福餅の上に砂糖をてんこ盛りにしてその上から黒蜜をかけたみたいだ」と言わしめるほど。
大店のボンボンらしく金に苦労したりはしていませんが、死にかけた数が半端ではない「苦労人」(?)なので性格も心根もある意味まっとうな良い青年であったりします。
物事を論理的な目で見ることも、一見何の脈絡もないように見える物事の中心を見通す目もあります。
助ける兄やの手代たちは実は犬神と白沢という妖で、この一太郎の周囲には妖がいっぱいいて、一太郎を助けてくれます。
当然ながら一太郎に対する世話の焼き方も尋常じゃないくらいですが、一太郎はその世話にちゃんと応える(?)病弱さ。
妖は人でない分、どこかズレていて、そのズレている所がまた可愛いです。
小さい小鬼の「家鳴」が何とも可愛いです。
見目も美しく、病弱…という少年が主人公の作品というのは、BL系のものには結構ありがちな設定だったりします。
ライトノベルズ系の作品は地の文に「超絶美形」なんてのが入ったりするのまであって、単に美しいってのは何の意味も持たなくなってしまっている気が…(この作品の感想ではないですがw)と美形の出てくる小説は最近ちょっと警戒ぎみだったりしています、個人的に。
この一太郎は病弱な自分に対してコンプレックスをちゃんと持っていたり、自分の出来る事を自分の力で解決しようとしたり…と、これがなかなか良い漢であったりして、ニンマリ。
猟奇的殺人事件を解決に導いた後はちゃんと寝込みますし(笑)。
楽しみました。