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評価:
越谷 オサム
新潮社
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(2004-12-21)
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こいつ、なかなかいいやつなんだ、幽霊であることを除いては…。
ハンバーガーショップで働く 「僕」は、ある雨の晩、ひき逃げを目撃したばかりに、死んだ若者の幽霊にまとわりつかれる羽目に。
でも、なかなかいいやつなんだ、アルバイトの美少女にご執心なのはこまりものだけど…。
某ハンバーガーチェーンに勤める草野は田舎道でひき逃げを目撃し、その時死んだ被害者の幽霊がくっついてきて…と話は始まります。
この幽霊、横井亮太は生まれた町が喧嘩祭りで有名な土地で、荒っぽい気風の町でビビりながら育った文科系。
荒っぽいのから逃げるために「お調子者の世渡り上手」というアビリティを装備した…という、すごくテンポの良い奴で、普通の地の文でも結構笑えそうなくらい。
そんな調子の良い亮太ですが、お調子者故に自分の葬儀の時の家族の悲しみがとても切ないです。
草野が勤めるハンバーガーショップのアルバイト南と南の妹の友達でやはりアルバイト仲間の明日香が実は「見える」人だと分かり、亮太をひき逃げした犯人を突き止めるのに巻き込んだり、亮太以外の幽霊も成仏させたり。 この幽霊を成仏させるのがまたホロリと切ない感じで良いのですわ。
幽霊である亮太を含め登場人物たちが真面目で特に目立たないフツーの人たちな訳ですが、これがフツーの人たちだから良い感じだったり。
ハンバーガーショップのマネージャーである草野と一緒にずっとハンバーガーショップ内にいることになる幽霊の亮太に、仕事を自分ひとりで溜め込まず他の人に上手く振り分けて…とアドバイスされるのですが、これがなかなか鋭い(笑)。
作者がハンバーガーショップで働いた経験があるそうで、ハンバーガーショップのお仕事に臨場感がありました。
第16回(H16年)日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞