香納 諒一著集英社 (2004.5)通常2-3日以内に発送します。
都会の片隅、青春の黄昏を編集者たちがゆく−−
東京・新宿二丁目にある編集プロダクション「オフィスOS]に集う面々…。
30を目の前にした、小さな編集プロダクションを運営するシノさんこと篠原、パートナーで放浪癖があり時々行方不明になる越智、物怖じしないガッツがあるがどこかあやういライターの佐智子。
シノさんの高校時代からの友人でもある編集者の和泉、ベテランライターの古橋。
馴染みの飲み屋「エイト」のママ・栄子。
校了前は弩等のように忙しい編集プロダクションの仕事、ロクに寝られず、体はヘロヘロになりつつ、仕事だけはきっちりと上げる編集プロダクションの面々や、出版社の編集の仕事をしているシノさんの友人や仕事仲間たち…。
一生懸命に好きな仕事をしていても、雑誌の下請け原稿を上げる仕事は忙しく、かつ過酷でさえあります。
好きでこの仕事をしているとはいえ、時々「何をやっているのだろう…」と思ったりもします。
そんな面々が、仕事で奔走したり、自分の人生を考えたり、また恋模様があったり…そんな中でいつも顔をあわせていた面々の立つフィールドが少しずつ変化していきます。
嫌な変化ではなく、それぞれが考え、決断し、その結果の変化であったりします。
30歳あたりの、好きな仕事をしているが…という主人公・シノさんの心の気持ち、その後小説を書き出し、「大切なのは、自分が信じている世界を描きつづけていくことだ」と応募作から次の作品を書き出す所まで、青春と言うには少々年を取っている、けれどまだまだ可能性はある…という「青春の黄昏」の時期にいるシノさんと、その周囲の人々の、真摯な姿勢が、切ないくらい熱いのが良いです。
気持ちの良い読後感でした。お勧めです。