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評価:
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20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
¥ 1,341
(2008-09-05)
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原題「Of Mice and Men」
原作 ジョン・スタインベック
制作・監督 ゲイリー・シニーズ
脚本 ホートン・フート
撮影 ケネス・マクミラン
音楽 マーク・アイシャム
出演 ゲイリー・シニーズ(ジョージ)
ジョン・マルコビッチ(レニー)
レイ・ウォルストン
ケイシー・シーマスコ他
1992年製作の少し古い映画です。
この作品でゲイリー・シニーズが「演出・出演とも注目され」た(ネットで検索するとそう評されている事が多いです)のが良く分かる感じです。
ジョン・スタインベック原作、ちなみに戯曲もスタインベック本人が手がけたそう。
監督・主演のゲイリー・シニーズの劇団「ステッペンウルフ・シアター・カンパニー」でも上演していて評判高かったそうです。
ジョン・マルコヴィッチのレニーも素晴らしいですが、ゲイリー・シニーズのジョージもとても印象に残る素晴らしさでした。
ちなみにステッペン・ウルフ・シアター・カンパニーの「ハツカネズミと人間」の公演の写真↓
時代的には大恐慌時代(1930年代)…という事になります。
渡り労働者のジョージとレニーはタイラー牧場にやって来ます。
このタイラー農場の前の農場でレニーは何かをやって、2人で逃げてきた模様…。
タイラー牧場にたどり着く前に野宿した川のほとりで知恵遅れのレニーはジョージに「話してくれよ。まえに話してくれたみてえに(Tell me like you done before.)」と彼らの夢の話をジョージにせがみます。
小さな家と数エーカーの土地の、彼らがいつか手に入れる農場の話を。
このやりとり、レニーのワクワク感がなかなか切ないです。
新しく仕事を見つけたタイラー農場では、雇い主の息子カーリーがレニーに何かと難癖をつけてきます。
カーリーは背の小ささにコンプレックスを持ち、そのコンプレックスを尊大な態度で周囲を威嚇するタイプ。
猜疑心が強くボクシングの腕だけが自慢のカーリーと、結婚して2週間、結婚したばかりの亭主を愛していないのが見て取れ、しかも誰彼かまわず愛想をふりまく美しい新妻…。
小さいものフワフワしたものに惹き付けられ、可愛がろうとし、いつもいつの間にか死なせてしまうレニー。
カリーの新妻に「決して近付くな」とジョージに釘をさされていても彼女が現れるとつい目で追ってしまったりします。
話を追いながら、「うわ〜…何か平穏な方向には絶対に行かないよ…」と少しドキドキしながら見だし、ラストはやはりハッピーエンドではなく…で終わります。
原作と映画版はラストが少し違いますが映画版のラストのジョージの眼差しが余韻が残ります。
原題はスコットランドの詩人ロバート・バーンズの詩「ハツカネズミ」の一節から取られたものだそうです。
The best laid schemes o' mice and men
Gang aft agley [often go wrong]
And leave us nought but grief and pain
For promised joy!
ハツカネズミと人間のこのうえもなき企ても
やがてのちには 狂いゆき
あとに残るはただ単に悲しみそして苦しみで
約束のよろこび消えはてぬ
(新潮社「ハツカネズミと人間」大浦暁生訳)
原作は中篇の長さです。
台詞として語られる言葉で心に残るものと、文章で心に残るものだと幾分違いがあるかも知れませんが、どちらも過不足ない分量で小さな喜びや哀しみ、ほのかな希望とそれが打ち砕かれた後の苦い思いを描いています。