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評価:
A.J. クィネル
集英社
¥ 880
(2000-04)
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初老の元外人部隊兵士クリーシィは、ミラノの富豪の娘のボディ・ガードに雇われた。だが娘が誘拐・惨殺される。標的はシチリア・マフィア。たったひとりの復讐劇が始まる。
ナポリでペンションを経営する元傭兵のグィドーの元に傭兵仲間にして親友のクリーシィが訪ねてきます。
そろそろ50に手が届こうとしているクリーシィは、ディエン・ビエン・フー、フランス外人部隊、アルジェリア、カタンガ、ベトナム、ローデシアなどを生き抜いてきた傭兵です。
寡黙で、孤独な元傭兵であるクリーシィは、気がつけば時代の流れが変わり、戦闘地域にいても不毛感を感じるしかない「燃え尽き」の状態に自分がいる事を悟ります。
酒に逃れ、かつての栄光は色あせ、雇われている軍にはお情けで「顧問」として置いてもらっている状態…。軍を辞しても残っているものは何もない状態…。
クリーシィは何もかもが過去のものとなり、今手に残っているものは何もなく、明日への希望も、心を占める大切なものもない状態です。
グィドーの弟の紹介で、ナポリの富豪の娘のボディ・ガードを引き受けることになります。
「プレミアム・ボディガード」。
報酬は決して高くはない、どちらかと言うと「ボディガード」を雇っています、と言う事を誇示するための廉価版ボディガードです。
気の進む仕事ではないながら、他にする事もしたい事もないクリーシィはミラノの富豪の娘のプレミアム・ボディガードの仕事を引き受ける事になります。
富豪の娘、ピンタはクリーシィが気に入り、寡黙で気難しい元傭兵のボディガードの心をしだいにほぐしていきます。
このピンタとクリーシィの繋がり方がほのぼのしていて素敵です。
ここからはネタバレになるかな…。反転してください→|
しかし、その繋がりはピンタの誘拐とクリーシィの負傷、ビンタの死亡(陵辱され、交渉が難航する中、監禁中にアクシデント的な事が重なり死亡してしまいます)で幕が突然下ろされます。
クリーシィはグィドーの協力を得、グィドーの亡き妻の故郷で潜伏しつつかつての傭兵としての力を復活させる事を自らに課します。
全てはピンタの受けた陵辱を、与えた側に返し、加担した人間をすべて焼き払う事を目的に…。
本編は第1部は空虚で絶望し、明日への気力さえなくしていたクリーシィがピンタによって生き返る過程を、第2部はクリーシィがグィドーの亡き妻の故郷で身体を造り替えつつ愛する女を見つけ、それでも本来の目的に邁進する過程を、第3部ではピンタに危害を加えた人間のみならず、それを許したもっと巨大な悪の中枢まで叩き潰そうとする課程を、第4部では表からも裏からも物事を牛耳っているマフィアのボスを葬り去るまで…とクリーシィの復讐は止まりません。←|ネタバレ終了
難攻不落の要塞化した屋敷で、どうやってボスを葬るのか、その後にクリーシィの退路はあるのか…もう、結構夢中で読み進んでしまいます。
この「燃える男」は「マイ・ボディ・ガード」の原作にあたります。
2004年、アメリカ作品、
監督 : トニー・スコット
出演 : デンゼル・ワシントン ダコタ・ファニング
で映画化されました。
映画「マイ・ボディ・ガード」も原作の味わいをある程度上手く映画化していますが、映画は映画、原作は原作…と言う感じも。
クリーシィの行動面は原作の方が緻密です。臨場感は原作の方が上。
映画も楽しみましたが、「映画と原作、どっち?」と聞かれると「原作の方が面白い」になる感じが。
映画は原作を上手くアレンジしています。
経過やラストは全然違います。
映画→原作の方が楽しめるかも…と言う感じはあります。